「本音」と「建前」
今日は、先日、とある交渉の立会いを行った時の話を少ししたい。ただ、ある程度ぼかすことをご容赦願いたい。
【登場人物】
○私(Bさんをサポート)
○Aさん(すごい人)
○Bさん(Aさんの助けが欲しい人)
【交渉】
交渉は、BさんからAさんに説明を行い、適宜AさんからBさんに質問が行われるという流れである。
今回の私の役割は、Bさんの説明を適宜サポートすることと、Aさんからの質問に多少の専門用語等が混ざり、Bさんにわかりにくいと感じた時に、「Bさん、今のご質問はこういうことですよ」と翻訳することが主である。
Bさんからの説明、Aさんからの質問に対するBさんの対応、冒頭20分位はまずまずの流れだ。
ここでAさんからの質問が数字に連関するものに変わってきた。Bさんも、多少もたつきながらも誠実に回答していく。
ただ、この応答が繰り返されることによって、少しAさんの気が緩んでしまったのか、
Aさんの質問に対し、「いや、本音は○○ということで、、、、」とBさんがこれまでのトーンと異なる感じで返す。
ここで場が一気に凍る。。「(私の心の声)しまった、、」
私も素早くフォローを入れるが時すでに遅し。
これまでの流れから、Aさんから一気に強めの詰問とそれにタジタジになるBさんという流れに激変。
「まぁ、また今度」という恐らく今度が想定されていない言葉がAさんから投げかけられ交渉が終了。........
【振り返り】
今回の交渉は、もともと決して成功といえるハードルが低いものではなかった。ただ、振り返ればチャンスはあった。
ポイントはあの時のBさんの回答するときのトーンの変化と、それを未然に防止できなかった私自身の展開の読みの甘さだ。
実際、AさんはBさんの「本音」を恐らく全てはじめから見抜いている。つまり、「何(what)」を答えるかを求めて質問しているのではなく、「どのように(how)」答えるかを見ながら質問していると思われた。
まさに「本音」と「建前」の話で、今回は相手がこちらの本音を見抜いていると感じていても「建前」を貫くべき場であった。今回、Aさんは、Bさんに恐らくそれを求めていた。「建前」でもその防衛線を崩さない姿勢を。
短い時間でも初対面の相手と距離感が急速に縮まることは確かにある。ただ、プロは、あえて距離感を縮めるよう仕掛けて、一気にカウンターを打ってくる。これは交渉の中でよく使われる手法だ。
今回は、勝ち負けをつけるとすれば、Bさんは負け、私も当然負けだ。ただ、Bさんからは私に「申し訳ない」という言葉が投げかけられた。恐らくBさんも、既述の流れを振り返り、自然と自責の念にかられたのだろう。
今後Bさんとどういう関係性になるかはわからないが、もし次の戦いをBさんと共にすることがあれば、この交渉が「糧」にならなければ本当に意味がない。幸いにも戦いを挑むべきチャンスはまだ多く用意されている。
これまでも局地戦の積み重ねが、仕事をする自分のコアを作ってくれたと思っている。全勝じゃなくても構わない。ただ、リーグ戦だと、負け越せば大抵はリーグ敗退だ。
勝とう!必ず突破しよう!という意思が、いつも、そしてこれからも自分を突き動かす原動力であることは間違いなかろう。